アメリカには、野生動物の保護・管理を行う機関があります。
「アメリカ合衆国魚類野生生物局」
United States Fish and Wildlife Serviceで、通称「FWS」と呼んでいます。
自然が豊富なアラスカにも当然FWSの事務所があります。
そこを訪ねてみることができました。
獣害の相談
先住民の村々には沢山の野生動物が現れます。
沿岸には、シロイルカをはじめとした鯨類、アザラシやラッコ。
森には熊、シカ類、野鳥などが多くいます。
自然と共存するアラスカの先住民は獣害もあります。
簡単に「動物の保護」という人もいますが、自然の厳しいところは危険もあります。
獣害の1つとして、白熊(ホッキョクグマ)が人を襲うことです。
ホッキョクグマはレッドリストの「絶滅危惧 危急」にあたる動物で、
過去に防寒具や食肉として狩っていた先住民といえど、今は狩猟することはできません。
北極海に面する村では、白熊が見られます。
熊は雑食なのですが、極地では植物がほとんどないので、ホッキョクグマはほとんど動物を食べます。
主にアザラシや魚を食べたりしますが、稀に人を襲うケースがあります。
過去、ホッキョクグマに襲われた先住民もいて、その後FWSが仇討を許可した例もあります。
また近年は、保護されたラッコが増えていることが問題になっています。
ラッコは大食漢で、日本の水族館にいるラッコの1匹の食事量は1日7kg程です。
野生になればより多く食べると推測されています。
魚を捕まえることはほとんどできず、沿岸で動きの遅い動物を狩ります。
だいたい、ウニやカニ、エビ、貝が主な食べ物です。
ただし食べる量が半端ないので、水産資源がどんどん減ってしまうということがおきています。
人間は、水産資源の管理を徹底し持続可能な環境を作っているのですが、エサが増えることでラッコの急増に悩む地域もあるのです。
一応、先住民はラッコを自由に狩ることが許可されています。
もともと毛皮として使っている歴史があり、先住民の中で流通する分には今も許されています。
ただ、先住民ではない人への売買・プレゼントは禁止されています。
最近は、先住民の数が減ってきていて、ラッコを狩る数も減ってしまいラッコを増やしています。
先住民だけでなく、アラスカ全体の漁業に影響を与え始めています。
そんなことをいろいろとFWSの担当者とお話しすることができました。
先住民の海獣会議
さらに IPCoMMという先住民の海獣会議にも参加しました。
先住民を会員とした海獣会議をまとめている総会のような団体です。
ラッコが増えたことはアラスカ全体の問題になっていて、昨年以下のような法案が出されたのです。
「ラッコを狩ることができる先住民が、ラッコを狩れば、1頭当たり100ドルを支給する」
みたいな内容です。
※ ざっくりの法案の内容です。
当然先住民はこれに反発したわけです。
先住民は今でもラッコを狩ります。
でも必要以上に狩ることはしません。
あくまでも自分たちが着るため防寒具の分のみであり、必要な分だけを狩ります。
無駄な殺戮を先住民にあてられたことに非常に怒っていました。
しかし、ラッコが増えていることは悩みであることは間違いないようで、いろいろと良い案はないのか検討しています。